こんにちは。
血縁関係及び親子の関係とはなんだろうか。最近、ちくま文庫から上梓されている高橋和巳の『子は親を救うために心の病になる』を読んだ。
高橋氏は現役の精神科医である。本著では、患者(親側)と筆者とのやり取りと筆者の分析が書かれている。本著の中で特にポイントになるのが以下の3つである。
①親は自らの子どもを親自身の幼少期と重ね合わせるということ
②誰しも子ども時代が強烈なアイデンティティとして成人後も残存すること
③自己の存在を感じることが発達段階において重要になること
①親は自らの子どもを親自身の幼少期と重ね合わせるということ、については特に第1章から第3章で言及されている。例えば、第3章p130ではどうしても我が子に虐待をしてしまう女性についての症例が記述されている。ここでは、この女性自身も幼少期に親から虐待を受けていたというのがポイントである。女性自身の子どもに対しても、女性が当時親から望まれていたことをどうしても強要してしまう。
②誰しも子ども時代が強烈なアイデンティティとして成人後も残存すること、については本著全体で述べられている。患者は筆者のカウンセリングで子ども時代の話をする。この子ども時代の話をきっかけに患者の自己そして自身の子に対する認知が拡張されていく。つまり、現段階での主訴は患者の子ども時代から地続きであるということが多いということだ。
③自己の存在を感じることが発達段階において重要になるということ、については特に第5章p255とエピローグp265で述べられている。筆者は発達段階を5段階のモデルで示している。乳幼児期、学童期、思春期、成人期、宇宙期だ。ざっくりいうと、
乳幼児期と学童期は親と時間や空間を共有する時期である。
思春期は親から少しずつ離れ自立を目指す時期である。
成人期では親と子は対等になる。
宇宙期は大人になる過程で成人期以前の経験を早期し、成人期とは違った心の状態が生まれる。*1
この宇宙期では特に自分とは何かという問いをカウンセリングや日常生活を通じてもう一度向き合う過程で患者が自分の存在感を認識する。この自己を認識することで、主訴を乗り越えたり、新たな自分を発見し、新たな人生を歩んでいけるということである。
この本を読む中で、さまざまな問いや考えが浮かんできた。
・リチャード・ドーキンズの『利己的な遺伝子』といった遺伝子学からみた親と子関係について
・血縁という心理的、肉体的な強固な鎖について
・親子関係における親と子それぞれの自己認識論や他者論について
などなど
考察や分析まで書こうと思ったが、疲れたためここまででやめる。ただ一つ、思うことは親子関係の外部にある第3者がどのように関わっていくかは実践の場面で徐々に実感できるのだろうということだ。
最後まで読んできいただき、どうもありがとうございます。
*1:宇宙期という言葉は筆者の造語である