こんにちは。
ある人から借りていた鷲田清一氏の『「聴く」ことの力』を読んだ。
鷲田清一という人物を知らなかったのだが、調べてみると現代現象学や倫理学を専門とした人物だ。確かにこの著書の中でもメルロポンティ、ニーチェなど現代思想家から引用がある。
さて、この本では人間同士でおこなわれる「聴く」という営みを現代思想を基に日常生活の場面レベルで分析し、考察を述べている。「聴く」ということには、話をする他者がいて、他者と場を共有し、心の調子を合わせて行われているなどなど、、、複数要素から成り立つ行為だ。
話しているけど、相手に伝わっていない。相手の話が頭に入ってこないが相手はしゃべりつづける。お互いに話にくい。なんてことは誰しもあるだろう。
逆に、あの人には無限に話してしまう。なんだかあの人は話しやすい。あいつとは居心地がいいな。と思うこともあるだろう。
そんな誰しもが日常生活で経験しているコミュニケーションのコアをこの本を通じて読み取ることができる。個人的には3章の沈黙に関する記述が大変興味深い。
沈黙の時間感覚や意味感覚を他者と共有できたら、きっと心地よいテンポの会話が生み出されるのだろうとふと思った。
そして、余談だが、古本で読んだり人から(学術的な)本を借りて読んだりすることの良さは、「書き込み」があることだと思う。エクリチュールというかテクストという独立していて無機質な言語を媒介に誰かと並走しながら、もしくは会話をしながら読み進めていく感覚はなんだか少し心地よい。
話し方いろいろ、聴き方いろいろということで。