探究人間のいろいろ。

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「あしながおじさん」における新しい読み方の提案 ジャーヴィーのジェル―シャに対するアプローチの分析、考察から

 遥か昔に大学の課題としておこなった、「あしながおじさん」に関する新しい読み方について書いたものが発見された。思い出としてここに残しておく。

 ※かなり長くなる(笑)

以下本題

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 本稿の目的はジーンウェブスター作「あしながおじさん」(原題:Daddy Long-legs)における第三者的視点からのリーディング方法を提案し本作品の内容理解、解釈に新たな一提案を示すものとする。あしながおじさん(=ジャーヴィー)の行動が垣間見える箇所を引用し彼の言動の意図を考察する。最後に、主人公のジェル―シャ・アーボットがあしながおじさんに対して一方的に手紙を送り続けた内容を読むことに加え、文章には書かれていない内容を引用文を基に考察し新しい「あしながおじさん」という文学作品の読み方の提案を行う。

 

あらすじ

物語の冒頭、主人公ジェル―シャ・アボットが書いた「ゆううつな水曜日」から始まる。そこには孤児院にて97人の後輩孤児の面倒を見るジェルーシャの孤児院のために働くあわただしい生活や勉学をする暇もない様子が描かれる。

 そこに突然現れた評議員がジェル―シャに対し、彼女の高校での成績、非凡な文学の才能を見出し大学に進学する援助をしたいと申し出た。彼はどうやら大変なお金持ちで、以前にも何人かの孤児院出身者にこのようなことをしていた。しかし、支援したのは今まで男児のみで女児を支援するのは初めてのことである。事細かな計画を孤児院の院長に提案した。院長からその提案を受けたジェル―シャは困惑するがこの孤児院から抜け出し、新たな生活を送ること決心する。毎月、お小遣いが彼の秘書を通じてジェル―シャに送られるのだがそこには一つ条件があった。それは彼に毎月手紙を出すこと。そこに何を勉強したのか、大学生活の様子などを書くようにというものであった。

 これ以降物語はジェル―シャが彼に宛てた手紙を読むという形で展開されていく。最初は彼のことを奇妙に思いながらも以後、自身の名前をジュディと変えたり、彼を「あしながおじさん」と呼び、彼に対して大学生活の様子を生き生きと手紙で語る。

 ジェル―シャはどんな姿をしているかわからない「あしながおじさん」という人物に思いを巡らせながら手紙を書き続ける。本書は一人の少女の少し遅い青春を追うことが出来る。

 

注釈

※本稿ではあしながおじさんを「ジャーヴィー」と呼称を統一する。また、ジェル―シャ・アーボットを「ジェル―シャ」と呼称を統一する。

 

ジャーヴィーの言動、人物像

時間軸

引用ページ

引用文(一部抜粋)

事実として認識できること

入学前~一年次

P45

 

 

 

 

P66

 

 

 

 

 

 

P69

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P80

 

 

 

 

P84-87

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P93-97

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P98―103

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十月十九日 

「おじさんはあたしの質問に全然答えてくださいませんでしたけど、…」

 

三月二十六日 

「おじさまはあたしの質問に答えてくださいません。…あたしは、おじさまのことを何ひとつ知りません。名前すら知らないのです。…」

 

病院にて 四月四日 

「…看護婦さんがあらわれて、あたし宛ての白い大きな細長い箱を持ってきてくれました。すばらしく美しいピンクのつぼみのバラがいっぱい入っていました。もっとすてきだったのは、そこにとてもていねいなメッセージが書いてあって…」

 

五月二十七日 

「おじさんは、ほんとうにすてきな方です!農場のこと、たいへんうれしく思います。…」

 

五月三十日 

「…あたしは、男の人と歩きまわり、おしゃべりし、お茶を飲みました。…その方は、ジュリアの一族の、ジャーヴィス・ペンドルトンという方です。手短にいえば、ジュリアのおじさまです。…(そう、足長といえば、おじさんと同じくらい、背の高い方なんですよ。)…その方はジュリアのお父さんの一番下の弟さんなんですけど、ジュリアはあまりよく知らないみたいです。どうも、ジュリアが赤ちゃんのときにちらっと見て、気にくわない子だと思い、それ以来ジュリアのことには目をとめなかったようです。…本当に人間らしい方―ちっともペンドルトンらしくない人です。…その方は、背が高く、やせ型で、浅黒い顔にしわがいっぱいあります。笑っているのかいないのかよくわからないような、すごく不思議なほほえみが浮かぶと、口もとにほんのちょっとだけしわが寄るんですよ。…その方は大学へもどるとすぐ、汽車にのるためいそがなければならなかったので、ジュリアにはほとんど会えずにおわってしまいました。…今朝(今は月曜日です)、速達でチョコレートが三箱、ジュリアとサリーとあたし宛てに届きました。…」

 

ロックウィロウにて 七月十二日 

「…実は、ここのもとの持ち主はジャーヴィス・ペンドルトンさんで、…そして、一族の中でもいちばんのすばらしい方が、ジャーヴィーぼっちゃまです。―ジュリアは、一族のうちでも格の低いほうに属しているのがわかりました。…」

 

日曜日

「…ペンドルトンさんは、十一歳の頃、病気をしたあとすぐに、ここへきて、夏を過ごしたんだそうです。そのときに『追跡』をおいていってしまったんです。何度も読んだみたいで…冒険好きの元気な男の子で―そのうえ、勇気があって、うそをつかない子だったようです。…」

 

①ジェル―シャの入学後7か月間、一切の手紙の返信をしていない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

②ジェル―シャにお見舞いを贈った。初めて直筆のメッセージを送った

 

 

 

 

 

 

 

③夏休みにジェル―シャが孤児院に戻りたくないという手紙を受け、農場で過ごせるように便宜を図った

 

④ジェル―シャと初めて実際に会う

 

 

 

 

⑤ジェル―シャの学校の友人であるジュリアの叔父であることが明らかになる

 

 

 

 

⑥姪のジュリアには興味がないことが明らかになる

 

 

 

 

⑦背が高く、やせ型、浅黒い顔にしわがいっぱいあるという身体的特徴が明らかになる

 

 

 

 

 

 

 

⑧翌日以降にチョコレートを贈る

 

 

 

 

 

⑨ペンドルトン家の出身ということが明らかになる。

 

 

⑩招待した農場はもともとペンドルト家とゆかりのある場所であった

 

 

 

⑪幼少期の病気

 

 

 

 

⑫冒険好きの元気な男の子、勇気があって、うそをつかない子であった

二年次

P113-117

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P117-121

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P131-133

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P134-138

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P154-156

 

 

 

 

 

 

P172-182

マサチューセッツ州ウスター、ストーン・ゲイト荘にて

十二月三十一日 

「もっとまえにお手紙を書いて、クリスマスに送ってくださった小切手のお礼をいうつもりだったんですが、…このあたしの、完璧な、文句なしの、最高の幸福に、たったひとつ残念なことがありました。それは、ジミーマクブライドといっしょに、コチロン(フランスで始まった軽快な社交ダンス)の千乙を切って踊っているあたしを…」

 

土曜日 六時半 

「…ジュリアの素敵なおじさまが、今日の午後、またいらっしゃました―そしてチョコレート二キロ入りの箱を持ってきてくださったんです。…おじさまは、あたしたちの無邪気なおしゃべりが気に入られたみたいで、帰りの汽車の時間を遅らせて、勉強部屋でお茶をめしあがりました。…あたしは面と向かって「ジャーヴィーぼっちゃま」とお呼びしました。でも、ちっともいやな顔をなさいませんでした。ジュリアは、おじさまがこんなにご機嫌がいいのを、はじめてみたといいました。…」

 

三月二十四日もしかして二十五日 

「…ジュリアとサリーとあたしで、今度の金曜日にニューヨークへ行って、春の買い物をし、ひと晩泊まって、次の日に「ジャーヴィーぼっちゃま」と劇場へ行くことになっています。ぼっちゃまが招待してくださったんです。…」

 

四月七日 

「…買い物のあと、あたしたちはレストラン「シェリー」でジャーヴィーぼっちゃまと会いました。…ジャーヴィーぼっちゃまが、あたしたち一人一人に、スミレとスズランをいっぱい、花束にして贈ってくださったんです。…」

 

六月五日 

「…スミス様はあたしがマクブライド夫人の招待をことわって、去年の夏と同じく、ロック・ウィロウ農場へ行くのをお望みです、と書いてありました。…」

 

八月二十五日 

「さあ、おじさん、やっとジャーヴィーぼっちゃまがいらっしゃいました。…もう十日になりますけど、いっこうにお帰りになる気配がないんですもの。…ぼっちゃまは、ほんとうに気さくな方です。…とにかく素朴で、まわりのことにふりまわされず、とってもかわい気のある方なんです…」

水曜日

「…ジャーヴィーぼっちゃまが料理をしたんです。料理はあたしよりうまいとおっしゃいました。…ぼっちゃまはずっと笑ったり、冗談をいったりして、おもしろいことをいっぱい話してくださいました。あたしが読んだ本は全部およみになっているし、他にもたくさんご存知です。ほんとうに、びっくりするくらい、たくさんいろいろなことを知っていらっしゃるんです。…」

 

 

 

⑬クリスマスに小切手を送った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑭直接チョコレートを持ってジェル―シャに接近

 

 

⑮おしゃべりをした

 

 

 

 

 

 

 

⑯姪のジュリアも初めて見るほど機嫌がよかった

 

 

 

 

 

⑰ニューヨークで劇場へ一緒に行くことを約束した

 

 

 

 

 

 

 

 

⑱花束を贈る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑲ジェル―シャがロック・ウィロウへ再び夏休みに向かうことを望む

 

 

 

 

⑳ロック・ウィロウにて十日以上ジェル―シャと一緒に過ごす

 

 

 

 

 

 

 

 

㉑ジェル―シャに対して料理を振る舞う

㉒ジェル―シャとたくさん話す

三年次

P196-P200

 

 

 

 

 

 

P200-202

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P221-227

 

 

 

 

 

 

十二月七日 

「ジュリアの家への訪問を許してくださって、ありがとうございます―お返事がないのは、巨してくださったことだと思っています。…」

 

十二月二十日 

「…どうしてもおじさんに、贈っていただいたクリスマス・プレゼントのお礼をいいたかったんです。本当にうれしかったです。毛皮とネックレスと有名な「リバティ」のスカーフと手袋とハンカチとハンドブック、とても気に入りました。…このごろやっと、ジョン・グリア孤児院にいつもクリスマス・ツリーと、日曜日のアイスクリームを贈ってくださった評議員さんがどなただったか見当がついてきました。…おじさんはあんなにたくさんいいことをなさっているのですから、きっと幸せになれる方です。…」

 

六月十日 

「…おじさんが、夏、あたしにヨーロッパ旅行をさせてくださるとおっしゃるのは、なんとおやさしく、寛大で、ご親切なことでしょう…」

 

 

㉓ジェル―シャがジュリアの家へ訪問したいという要望に対して返信をしていない

 

 

 

㉔クリスマスプレゼントとして毛布、ネックレス、「リバティ」のスカーフと手袋とハンカチとハンドブックを贈る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

㉕夏休みのヨーロッパ旅行を提案

四年次~

P233-235

 

 

 

 

 

 

 

P242-243

 

 

 

 

 

 

 

P247-248

 

 

 

 

P263-266

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P276-277

 

 

 

 

P279-286

十月三日 

「…ちょっと聞いてください。ジャーヴィーぼっちゃまがロック・ウィロウへ出した手紙がこちらへ転送されてきました。秋にロック・ウィロウへ行かれなくなったという手紙でした。…」

 

十二月二十六日 

「おじさんは、まともな神経の持ち主なんですか?一人の女の子にクリスマス・プレゼントを十七こも贈るなんて、とんでもないってことが、おわかりにならないんですか?」

 

一月十七日 

「きのう、あたしの家族のために送ってくださった小切手が届きました。…」

 

ロック・ウィロウにて

十月三日 

「おじさんが自ら書いてくださった手紙が―それも、とってもふるえた字の!…ご病気だったなんて、心からお見舞い申し上げます。…でも、あたしがもう一人の男の人に対して、さらにもっと特別の気持ちをもっているとお話ししても、お怒りにはならないでしょう?…あたしの手紙にはジャーヴィーぼっちゃまがひっきりなしに登場していましたもの。ぼっちゃまがどんな方なのか、そして、あたしたちがどんなに気があっているか、おじさんにはぜひわかっていただきたいと思います。…あたしよりも十四年も先にこの世に生まれでているんですから。…それなのに、あたしはあの方との結婚をことわってしまたんです。…結局あの方は行ってしまいました。…ジャーヴィーぼっちゃまとあたしは、とてつもなく深い誤解の溝にはまってしまい、おたがいにひどく傷つきました。…あの方は社会主義者ですから、伝統にとらわれない考え方の持ち主です。…これは二か月ほど前のことです。それ以来、あの方からはなんの連絡もありません。…「ジャーヴィーおじさま」がカナダで狩猟をしていて、ひと晩じゅう嵐のなかにいたせいで肺炎にかかり、ずっと具合が悪いのだと。」

 

十月六日 

「ええ、もちろんうかがいます―次の水曜日の午後、四時半に。…」

 

木曜日の朝

「…「お嬢さん、だんな様は重いご病気で、今日初めて、起きるのを許されました。…」…あなたはお笑いになり、手をさしのべて、こうおっしゃいました。「かわいいジュディ、ぼくがあしながおじさんだって、どうしてわからなかったんだい?」…お医者様がこられて帰りをうながされるまでの三十分間の楽しかったこと。…」

 

㉖手紙を返信

 

 

 

 

 

 

㉗17個のクリスマスプレゼントを贈る

 

 

 

 

 

 

 

㉘ジェル―シャが救済を希望した人物に対して金銭面での援助を行う

 

 

 

㉙手紙で自らが病気であることを明かす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

㉚ジェル―シャよりも14歳年齢が上であることが明らかになる

 

㉛2月前にジェル―シャに対して結婚を申し込んだが断られていた

 

 

社会主義者である

 

 

 

 

㉝病名は肺炎、またその原因はカナダでの狩猟中に一晩中嵐の中にいたことによるもの

 

 

 

㉞正体を明かして、ジェル―シャと会う約束をする

 

 

 

㉟具合はあまりよくない

 

 

 

㊱正体を明かす

 

㊲30分間ジェル―シャと話し続ける

 

ジャーヴィーの行動に対する考察

前章のジャーヴィーの言動、人物像における事実として認識できることを根拠にそれぞれ仮説を展開していく。

 

ジェル―シャの我慢強さや学校での様子について見定めている期間なのではないか。

 

ジェル―シャの危機(体調を崩したこと)に対して耐えられない気持ちになったのではないか。

 

ジェル―シャの要望(夏休み孤児院に戻りたくないということ)に応えようとした。加えて自らの育った場所を用意することでジャーヴィー(=自分)に注目を向けようとしたのではないか。

 

④⑤⑥⑦⑧

夏休みの農場での生活にてジャーヴィーという名前が引っ掛かるように人物情報を事前に刷り込んでおこうとしたのではないか。また、実際にジェル―シャに会ってみてどのようにジャーヴィーを描写してくるかを観察しようとしたのではないか。

 

⑨⑩⑪⑫

間接的にジェル―シャがジャーヴィーの情報を自然と探し理解できる様子を確認したかったのではないか。

 

農場の様子やクリスマスに追加の小切手を送りジェル―シャがジャーヴィーに興味を持ち続けていると思っていたが、ジミーマクブライドとダンスを聞いたことによって焦りが生まれたのではないか。

 

⑭⑮⑯

居ても立ってもいられず、直接ジェル―シャに会いに行き、ジャーヴィーから興味が離れないようにし、実際の様子を見るとジェル―シャのジャーヴィーに対する気持ちが離れていないことに安堵したのではないか。

 

⑰⑱

徐々に会うペースを増やしていくことによりジェル―シャへのアプローチを本格化し始めたのではないか。

 

⑲⑳㉑㉒

ジェル―シャとどうしても二人で会う機会を設けようと画策したのではないか。また、他の成人男性に興味が惹かれないように出会いの場を奪おうとしたのではないか。

 

ジェル―シャとの絆が深まったため敢えて何も言わなかったのではないか。

 

念入りなプレゼントは忘れずに行うがこの際に、「あしながおじさん」としてではなくジャーヴィーとしてクリスマスプレゼント送った、つまり人格(キャラクター)が混在しているのではないか。

 

㉕㉖

ジェル―シャがジャーヴィー(=自分)と時間を過ごせるように行ったが少し予想外の動きをされて戸惑っているのではないか。

 

㉗㉘

ジェル―シャが愛おしくて愛おしくてたまらないのではないか。

 

㉙㉚㉛㉜㉝㉞

今までのジェル―シャの行動の意図や気持ちを独白され動揺しながらもやはりジェル―シャはジャーヴィー(=自分)に好意があると確信したのではないか。

 

㉟㊱㊲

正体を明かし、愛の告白が成功する確信をもって実行に移したのではないか。

 

まとめ

 これまでの引用文、事実として認識できるジャーヴィーの行動、それを根拠としたそれぞれの行動の意図の仮説から、この「あしながおじさん」という文学作品をジェル―シャ目線の単なるシンデレラストーリーの児童文学作品として読むことだけではなく、ジャーヴィー目線のいかにして一人の女性を獲得するかという男性目線の話としても読むことが出来るではないか。「あしながおじさん」の文学作品としての特異性は冒頭以降、全て主人公のジェル―シャの手紙を読むという形でストーリーが展開していくため、彼女の周りで同じ時間軸上で何が起こっていたかを把握することが難しいところにある。したがって読者は、ジャーヴィー目線の読み方をすることでジェル―シャの一人称的視点から脱却し、児童文学としての読みから、裕福な貴族がいかにして14歳離れた若い女性を自らの結婚相手にするために画策する物語という新たな観点からの読みが可能となるではないか。

 今後の課題として、ジャーヴィーの具体的行動やそこから考えられるジャーヴィーの心情については他にも手がかりとなる部分が作中にちりばめられている可能性がある。また今回は谷口由美子訳の作品を取り上げたが異なる翻訳者や原文のみで考察をおこな場合に本稿とは異なる解釈が論じられることも考えられるため、引き続き研究を行っていく必要があるだろう。

 

参考文献

ジーン・ウェブスター作 谷口由美子訳 『あしながおじさん』 岩波文庫 2002年

https://www.gutenberg.org/cache/epub/157/pg157.html(閲覧日:2021年5月21日)