こんにちは。
先日、小坂井敏昌の「矛盾と創造」を読んだ。
人文科学から自然科学に至るまで、多くの人物や議論の例を引きながら著者がパリ第8大学で学生たちに講義してきた内容が書かれている。
この本の中でキーワードとなってくるのは「虚構」や「矛盾」といったタームだ。「私」という一人称性や「個性」、「普遍」といった概念など実は元々存在などしておらず、一過性の
社会的な現象や人間同士による相互の矛盾の黙殺にすぎないのではないかという部分が第3章や6章や終章に書かれており、中々興味深い。
また、第5章では昨今の多様性や個性重視の理念と学校というシステム自体のねじれについて議論されており、ここもまた面白い。
結局は恐ろしいけれども、伝統や文化、規範といった物自体はそもそも核となる部分はすっぽりと抜け落ちたまま、外殻だけが強化されすぎてしまい、今更、破壊することができなくなってしまったのかもしれない。空中に放り出された私は、ある種の「諦め」を受けとめ時間のフレームを取り払い、相(アスペクト)すなわち物ごとの状態をよく見る。優劣という価値観に左右されない、事実や現象に目を向けて生きていくことが必要だ。
希望もなければ絶望もないのかもしれない。
最後まで読んで頂きありがとうございました。